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名所・歴史探訪

土地の名所・史跡は、様々な歴史を教えてくれます。観光にとどまらず、ライターならではの目線で由緒あるスポットを詳しくご紹介します。

醸 のり子

語ろ具ライターによるオリジナル記事です。

悲話を今に伝える一夜官女祭り・野里住吉神社〜神社を歩く(5)

祭りの中には、悲しい歴史がその縁起となっているものがあります。今回は、野里住吉の祭りにまつわる悲しい物語をご紹介します。

若い娘を人身御供(ひとみごくう)として要求した神や化け物の物語は、日本神話や昔話にたくさん登場し、その舞台は各地に散らばっています。大阪市西淀川区に鎮座する野里住吉(のざとすみよし)神社もその一つ。そしてその悲しい物語は、「祭り」として今に残っているのです。


華やかな祭り行列

■神の嫁
民俗学者の池田弥三郎(いけだやさぶろう)氏は「性の民族誌」において、「すべての女性は神の嫁だった」と書かれています。すべての女性が巫女であり、神を斎き祭る存在だったというのです。

しかし「神の嫁」は、ただ神祭りをするだけの存在ではなかったのかもしれません。日本書紀にある、「八俣の大蛇(やまたのおろち)」の伝承や、今昔物語の「美作(みまさか)の国の神、猟師の謀(はかりごと)に依りて生贄を止めた語(はなし)」などには、「神」はときとして乙女を生贄に要求し、それを食べたということが見えているからです。

そしてその物語の舞台は決して局所的なものではありません。八俣の大蛇は出雲、今昔物語の神は岡山県、そして静岡県磐田市「矢奈比売(やなひめ)神社」にも、犬と英雄が生贄を要求する神を退治したという「しっぺい太郎伝説」が残っています。

もちろん、神が生贄を食べたというのが、何かの喩えである可能性は捨てきれません。乙女による一夜の祭祀のことを、「神への生贄」と表現して物語にし、後世に伝えた可能性もあるでしょう。また、乙女を食べたのは神ではなく、「神を騙った化け物」なのではないかという考え方もできます。

しかし、風神は台風で稲を倒しますし、雨神は長雨で作物を腐らせることもあります。害を与える存在をも、「神」と崇めてきたのが日本人ならば、生贄をとることにより、豊作を約束する存在もまた、「神」であると考えられていても不自然はないでしょう。なんにせよ、古い時代にあって神と人は、今とは比べものにならないほど密接な関係を持っていたということは、たしかなように思えます。

そして、神への人身御供を今に伝える祭りが、大阪市内に鎮座する野里住吉神社(地図)では今も行われているのです。


生贄の乙女が入ったとされる唐櫃


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